『セッション』
タイトル
セッション
原題
Whiplash
製作国
アメリカ
上映時間
107分
製作年
2014
日本公開日
2015.4.17(ギャガ配給)
監督
デイミアン・チャゼル
出演者
マイルズ・テラー
あらすじ
名門音楽学校へと入学し、世界に通用するジャズドラマーになろうと決意するニーマン(マイルズ・テラー)。そんな彼を待ち受けていたのは、鬼教師として名をはせるフレッチャー(J・K・シモンズ)だった。ひたすら罵声を浴びせ、完璧な演奏を引き出すためには暴力をも辞さない彼におののきながらも、その指導に必死に食らい付いていくニーマン。だが、フレッチャーのレッスンは次第に狂気じみたものへと変化していく。
予告編
感想
飛行機内にて鑑賞。英語音声日本語字幕なし。
結論から言うと、今年ナンバー1の傑作!!
去年から楽しみにしていたとはいえ、ここまでの作品だったとは。
音楽版の『ブラックスワン』という感じの映画。主人公であるニーマン(マイルズ・テラー)は名門音楽学校に入学するものの、孤独な青年。親戚達からはドラマーになるという夢を認めてもらえず、友達もいない。唯一の理解者は父親。彼は鬼教師フレッチャー(J・K・シモンズ)の罵声と暴力に満ちたレッスンを通して徐々に心が壊れていきます。
J・K・シモンズの演技が素晴らしい
鬼教師フレッチャーというのが見てて本当に怖い。レッスンが始まる前は生徒思いの優しい教師のよう。新しいバンドに緊張してるニーマンに対して優しい言葉をかけるんです。でもこれも作戦のうち。
練習が始まればこんな顔で全力で罵倒します。
椅子を投げつけることから始まり、練習前に聞き出したニーマンのコンプレックスから家庭事情まで引き合いに出してバンドメンバー全員に聞こえるように怒鳴って平手打ち。「Not my tempo」(俺のテンポじゃない)「Were you rushing? or were you dragging?」(走ってたのか?遅れてたのか?)はトラウマ。素人には聞いててテンポの違いなんかわかりませんでした。しごきではなくいじめ。
完全に悪人の顔。けどなぜか完全には憎めないんですよね。狂気に駆られてという表現が正しいのかわからないけど、ニーマンはフレッチャーに必死に食らいついていくんです。それは「歴史に残る偉大なドラマーになりたい」と考えているからというのもあるけど、フレッチャーという究極的にストイックな人に惹かれているよう。作中ではなぜ彼が厳しい指導をするのか明かされます。決して全てを受け入れることはできないけど、信念を曲げないキャラクターは魅力的です。
私は学生時代に吹奏楽部だったので、こういう指導する人を知ってます。たしかに怒鳴られたくなくて悔しいから腕は上がるんですよね。
フレッチャーを演じるJ・K・シモンズはサム・ライミ版の『スパイダーマン』シリーズの編集長役以外で観たことありませんでした。彼の演技で魅力的なキャラクターになっています。他の人がやってもただの怖い人になっていた気がしますよ。ゴールデン・グローブ賞助演男優賞受賞も納得です。来週発表のアカデミー賞ではどうなるのでしょうか。『ザ・ジャッジ 裁かれる判事』のロバート・デュヴァルも素晴らしかったけど、J・K・シモンズに取って欲しいです。
普段は優しそう。
クライマックス
予告にある宣伝文句「ラスト9分19秒 映画史を塗り替える」
映画史を塗り替えるかはわかりませんが、この結末に持っていくために本編があります。とにかくすごい!ラストは機内で画面にかじりついてました。まるで格闘シーンを観ているような感覚になります。音楽映画を超えた熱い映画です。
劇場公開の4月が楽しみです。大画面で観たい!
ただ邦題はやっぱり話の流れ『セッション』じゃなくて、『Whiplash』のままでよかったんじゃないでしょうか。『セッションズ』っていう似たタイトルの映画もあるし。
モノ創りをしてる人や音楽をやっている人には是非とも観て欲しい!!
おすすめです。
『イコライザー』
タイトル
『イコライザー』
原題
Equalizer
製作国
アメリカ
上映時間
131分
製作年
2014
日本公開日
2014.10.25
監督
出演者
あらすじ
ホームセンターに勤務するマッコール(デンゼル・ワシントン)は、かつてCIAで名をはせた工作員であったが引退し、ひっそりと生活していた。ある夜、少女の娼婦(しょうふ)、テリー(クロエ・グレース・モレッツ)がロシアンマフィアにひどい扱いを受けているのを知ったことから、マッコールは自分にしかできない仕事をすることを決意。それは、警察が手出しできない不正を瞬く間に解決へと導くことだった。
予告編
映画『イコライザー』予告編 2014年10月25日(土)公開 - YouTube
感想
池袋の新文芸坐にて鑑賞。
公開時に見逃していたのでソフト化直前のタイミングに観てきました。
結論から言うと、最高のアクション映画の1つでした!
劇場で観てよかった。
こういったアクション映画で特に大切なのは主人公が魅力的であるかどうかです。観てて「あ、こいつ無敵だ」っていう印象を与えます。系統としては『96時間』のリーアム・ニーソンと『沈黙』シリーズのスティーブン・セガールが近いですね。
序盤はただのホームセンターで働く普通の店員としての日常生活が描かれて、同僚に助言したりジョークで場をなぐさめる善人ぶりが描かれます。
うん。優しそうです。
対して敵に遭遇したときは。。
めちゃくちゃ怖い。
その場にあるものを利用して戦う姿は圧巻です。ワインオープナー、ショットグラスなど。まず敵に「俺に手を出したらやばいけど平気?」みたいなチャンスを与えたり、倒した敵に捨て台詞を吐くのも渋くてよかった。かっこいい以上に強すぎて怖い。戦っているときのロバートは目に生気がなくて感情のないロボットのよう。
たしかに敵に回したくない人だけど決して人殺しの狂人でなくて、揺るぎない正義の心を持っている人です。それは何回か登場する台詞「do the right thing」(正しいことをしろ)に表れてます。それがラストシーンにも繋がっていきます。
ネックは上映時間をもう少しコンパクトにして欲しかったのと、クロエ・グレース・モレッツがあまり可愛く撮られてなかったこと。
アクション映画好き、スカッとしたい人におすすめです!
本作は当初『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督予定だったらしい。そっちも見てみたかったです。
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『はじまりのうた』
タイトル
はじまりのうた
原題
Begin Again
制作年
2013
日本公開日
2015.2.7
監督
ジョン・カーニー
出演者
あらすじ
ミュージシャンの恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)と共作した曲が映画の主題歌に採用されたのを機に、彼とニューヨークで暮らすことにしたグレタ(キーラ・ナイトレイ)。瞬く間にデイヴはスターとなり、二人の関係の歯車に狂いが生じ始め、さらにデイヴの浮気が発覚。部屋を飛び出したグレタは旧友の売れないミュージシャンの家に居候し、彼の勧めでこぢんまりとしたバーで歌うことに。歌い終わると、音楽プロデューサーを名乗るダン(マーク・ラファロ)にアルバムを作ろうと持ち掛けられるが……。
予告編
感想
新宿ピカデリー スクリーン6にて鑑賞。
本国で公開された時から気になってた映画!やっと日本に来てくれた!
監督は名作音楽映画『Once ダブリンの街角で』のジョン・カーニーだし、大好きなキーラ・ナイトレイが出てるから待ち遠しかった。久々に事前にサントラも購入しました。
繰り返し聴いたけど、特に良かったのはキーラ・ナイトレイが歌う『Lost Stars』
観終わった後は聴きながら帰りました。
音楽の力って素晴らしい
失恋したグレタ(キーラ・ナイトレイ)と仕事をクビになり家族ともうまくいかない元敏腕プロデューサーのダン(マーク・ラファロ)が出会いアルバムを製作していくというシンプルなお話。ただお金がない彼らには当然スタジオを借りることはできずにいた。そこでダンが思いつく。
街中をスタジオにしちゃえばいいじゃん!!
公園だろうと路上だろうと録音し続けてアルバムを完成させようとするのです。騒音や警官の邪魔が入ろうが生の音をゲリラで録音する。そんなはちゃめちゃな行動を通して、ダンは娘との距離を縮めていく。このDIY精神溢れる録音シーンは観てて気持ちいい。
金がなかろうが機材がなかろうが大切なのは魂なんだと思えます。高い機材買い揃えようが良くない音楽は良くない。本当に良いものはどこであろうと生まれてくる。
なにより惹かれたシーンはグレタとダンが同じ音楽を聴きながら散歩するシーン!
同じ音楽とか映画を知ってお互いの距離を縮めていくってよくありますよね。イヤフォンのスプリッターが欲しくなりました。こんなデートしてみたい。
最初から最後まで音楽の魅力に溢れた映画でした。何回も見返したり、何年も語り継がれる名作ではないのかもしれないけど、気分良く劇場を出れる元気をくれる作品。観終わった後にサントラを聴くのもまた良い。ブルーレイ出たら買います。
ファッション
音楽以外にも主人公2人のファッションが良かったです。
グレタは作中でもダンに「流行遅れで男の子みたいなファッション」と言われてましたが、男に媚びてないんですよね。デニムにシンプルなシャツかワンピース。音楽性にも彼女の確固たる意志があって、売れるための演出を許さない。そんな性格が表れてました。
ダンはシンプルなジャケットスタイルなんだけど、まさに自分の好み!こういう格好が似合う男になりたいもんです。マーク・ラファロが出てる映画(アベンジャーズ、ゾディアックなど)は何本か観てきたけど、一番カッコよく見えた。やさぐれてるけど、それ以上に魅力的。
この映画の中で一貫して語られていたのは「音楽の素晴らしさ」と「本当に良い音楽とはなんだろう?」です。前述のゲリラ演奏シーンの高揚感は音楽が完成していく様を見ているようで、本当に楽しかったです。演奏してる演者もみんな笑顔で演奏してました。私も楽器をやっているのでなおさら心にきました。みんなで一つの音楽を作るって最高に楽しいんです。裏には練習の努力があるんだけど、人と演奏するときはそんな苦労を忘れるほど夢中になれるんです。それを思い出しました。
そして、拝金主義の音楽業界への批判が効いてるラストも印象深かったです。
こういう批判ができるのも、誰でも音楽を作ってPCで配信出来る世の中になったからこそのような気がします。昔ならレーベルの力なしでアルバムを作ることが難しい。
私も頑張ろうと思えた月曜の朝に相応しい作品でした!おすすめです!
ジョン・カーニー監督の前作。昨年ようやくブルーレイ化しました。